来兎の研究室跡地

作曲家、来兎の雑記です

「タレント本」を「ノウハウ本」として売ることははたしてテクニックなのか?

なにやら炎上していたので松本杏奈さんの本「田舎からスタンフォード大学に合格した私が身につけた 夢をつかむ力」を読みました。



内容は松本さんの海外の大学進学を中心とした身の上話。先生の言うことをきかない性格とか、私も学生時代そんな感じだったので割と親近感です。

感想としては、普通に自伝本で特にどうこういうものではありませんでした。

ただ、一点問題があります。 タイトルの付け方から、この本は「ノウハウ本」「自己啓発本」「ビジネス本」として作られたと推測されます。実際amazonのランキングにも「MBA」「教育学」「ビジネス教育」カテゴリで入っています。

自己啓発としてアリですが、ノウハウ本としてはほぼ役に立たない本でした。特にP28「(普通の人が海外有名大に入学する)前例がないのならば、私がなる」と書いてる割には先駆者として有用で具体的な情報を出してくれてるわけではないです。
キャッチコピーの使っている「味方なし」「お金なし」「英語力なし」も本人にとってはそうなんでしょうけど、読者の想定するであろう「〇〇なし」とはおおよそかけ離れたものです。それを特別なものを持っていない普通の自分として演出されては、読者に「じゃあ私は普通にもなれてないんだな」と反感を持たれてもしょうがないでしょう。

タイトルやジャンルからそういう本として期待した人が失望してもしょうがないと思います。

私が常々言ってることなんですけど、学生がちょっと特別なことをしたからといってそれをもてはやすのは止めたほうが良いです。過去にも「中学生起業家」を地元新聞が取り上げていましたが、そうやってちやほやされているうちに自分には能力があると誤解し、潰れていきました。
「起業した」「大学に合格した」はゴールではありません。それをまるで何かを成し遂げたかのように大人が持て囃すのは害悪でしかありません。

この本が炎上したのは、ネットで有名になった人の「タレント本」を「ノウハウ本」として販売した出版社の問題です。 

松本さんはこの本の最後に「ポテンシャルで終わらない」と書いていました。この逆境には大学卒業後の成功をもって乗り越えてほしいと思います。